見知らぬ彼女
彼を通して見える彼女は非常に可愛気があって透き通っていた。
まっすぐに彼を見つめて、信じて疑わない。
しかし、彼女には見せない姿が彼にはあった。
病気だ、と私は思った。なんとか治したかった。
まだ見ぬ、そしてこれからも絶対に会えぬ彼女のためにも。
ところが、病は私を発端としていた。
どうしようもなかった。せめて私が彼女だったら……。
ただ苦しかった。彼の前で何度涙を流しただろう。
どうして自分だけ黒い感情を抱かなければならないのだろう。
何故こんな目に遭うのか分からない。彼を憎みさえした。
私はいつも汚れていた。クタクタに疲弊していた。
そこから解放されてやっと自分になれた。
そして時が経ち、そんなことを考える自分さえいなくなり、
私は本当にくすんでしまった。