万華鏡の世界

自分と自分と時々君

遅々として進まない読書にも種類がある

元々数冊を並行して読むことが苦手なため、あまり同時に読んでいくことはないが、今、二冊の本を集中的に読んでいる。

 

音楽美学<野村>

音楽美学<野村>

 

 

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)

 

 タイプが全く違う本であるが、これまでこんなに時間をかけたことがあるだろうかというぐらい時間を費やしてしまっている。

『音楽美学』は内容がとにかく濃い。思想史が入っており、形式や内容があり、最後に音楽の本質についての言及がなされている。音楽美学の入門書は他に当たったことがないため、こちらの本が適当なのかは分かりかねるが、私はこの本を始めに手にとって良かったと思う。音楽美学において有名な人物の主張を、背景を捉えつつ把握することができるからだ。理解するのに時間がかかるため、じわじわと進めている。

 

『存在の耐えられない軽さ』は、いわゆる恋愛小説である。読んだことのない感触の小説で、書き手が話の要所要所でツッコミを入れてくる。今となっては珍しくない形式だそうだが、私はお目にかかったことがなかったため、かなり抵抗がある。感情移入して物語を進めるような読み方ではないし、かといって客観的に分析しながら読むのも違うように思う。なかなか読み進められないのはそのような型に対する戸惑いが大きな原因だが、内容そのものに於いても面白さが分からず、それでも尚読み進めてみたいという気持ちが捨てきれないからでもある。『存在の耐えられない軽さ』という概念や、永劫回帰というものがモチーフとして扱われているが、そこに新鮮味を感じることができない。既視感がある。もし、それを「面白い」と捉えることができたならば、受ける印象はもう少し違っていたかもしれない。このまま読み進めても心地良さは得られないのか、それとも何か見えてくるものがあるのか、今は真っ暗なトンネルの中にいるようである。

 

今、2冊の本のどちらともがさくさく読み進められないタイプの本であるため、読書が苦しいことこの上ない。ただでさえ病気をして読書がしづらくなった頭である。焦る気持ちもあるが、周りのペースに感化されることなく、まったりと読み進めるつもりである。遅々として進まない読書にも種類があり、どちらかというと後者の本は自分にとってあまり重要でないのかもしれない。一旦読むのを諦めて他の本に手を伸ばそうか考えものである。